sukima的レコード大賞2020

2020年リリースの作品(リイシュー含む)の中からsukima的おすすめレコードを5作品選んでみました。eno個人というよりは、店として選んだベストという感じです。紹介コメントは作品と店との関連性を意識して書いてみました。お暇があれば聴いてみてください。
店内レコード棚にもレコ大コーナー用意してます。

1
FUJI||||||||||TA / iki
自作パイプオルガンのドローン作家、藤田陽介がスイスの音響レーベルHallow Groundからリリースした作品。通年振り返ると、何かにつけてこればかりかけていたような。
この作品に入っている音は、パイプから抜ける空気音と、送風装置を押し込む時のカチャ音のみ。研ぎ澄まされたそれらの音と演奏時の所作は、ネガティブな空気を吸い込んで浄化しているかのようです。
年明けのオープンから徐々にお客様が増えていた矢先の緊急事態宣言。やりたいことが出来ない事への焦りや苛立ちを浄化させてくれたのもこの作品でした。
今でも特に雨の日やお客様がいない時など、ぼけーっと聴いています。ちなみに「sukima」という曲も入っています。

2
石原洋 / formula
White Heaven ~ The Stars、ゆらゆら帝国やogre you asshole等との仕事でも知られる石原洋のソロ作。今年行った「Ambient Meeting」や「聴覚の日曜日」を企画するきっかけを与えてくれた作品です。
都心の雑踏音と、その奥でかすかに揺れるように鳴るバンドサウンド。サイケともアンビエントとも取れそうですが、兎にも角にも官能的な音楽であることは間違いありません。
このありそうでなかったリスニング体験に大きな刺激をもらいました。この一年「誰も来ないでしょ」みたいな企画を繰り返してきましたが、それでもやっぱり新しい体験を提供したいと思えたのはこの作品があったから。
表現することに躊躇はいらない事を改めて教えてくれた、大切な作品です。

3
Enrique Rodriguez / Fase Liminal
現行スピリチュアルジャズやJazz The New Chapterモノは通年頻繁にプレイしていましたが、お客様から「これ誰?」とお尋ねいただいたり、おすすめをご紹介した事が多かったのもこれらのジャンルでした。その象徴として本作を選びました。
チリの新鋭エンリケ・ロドリゲスの新作はグラスパー以降のhiphopセンスを感じるジャズをさらに推し進めた傑作で、アンビエントや民族音楽も軽々飲み込んで、完全にジャンルレスな孤高の世界を作ってしまっています。これはもう、宇宙でサンラでザッパです。
本作の、歴史や慣例に囚われずただ良いものを選び抜くセンスは、選択肢が多すぎる現代において物凄く強いパワーを感じさせます。
スピリチュアルジャズ関連では他にもNat Birchallの新作、Pharoah Sandersの未発表作、YAS-KAZ/ Virgo Indigoのリイシュー盤、Impulse!を特集したJazzmanコンピなども反響が大きかったように思います。
「聴覚の日曜日」の初回では、スピリチュアルジャズの起源であるコルトレーンの至上の愛をプレイしましたが、残念ながら当日のご来客は少なかったので至上の愛を聴く企画はいつかまたやりたいと思っています。

4
幾何学模様 / 流水岩
なんだかんだでロックリスナーが多い弊店において、Guruguru Brain一連の作品への反応は凄まじいものがありました。
本作はレーベルを代表するバンドである幾何学模様の初期セッションが収められたリイシュー盤。弩級のストーナーロック、無国籍アシッドフォーク、ゲッチングマナーの反復&ディレイが詰まった、Guruguru Brainというレーベルを象徴するような内容です。
幾何学模様やダイダラ、南ドイツをかけている最中は、「う〜!」とか「あ〜!」とか「こ、これは…!」とか「ありがとうございます。ありがとうございます。」などの言葉が飛び交い、はたから見たら気持ち悪いほど店内がある種の多幸感に包まれました。
それはきっとGuruguru Brainのバンド達が、いわゆる「昔のロック」というものに全く引け目を感じず、自分達が好きな音楽を純粋に突き詰めているから。そして、その純粋な気持ちが現代の感性とクロスした結果、彼らの作品群がロック親父たちに愛されてきたかつての名盤を軽々と超える高みに到達してしまったからであろうと思います。

5
Senyawa & Stephen O’Malley / Bima Sakti
最後はインドネシアの実験音楽デュオSenyawaとドゥーム/ヘヴィドローン神Sunn O)))のStephen O’Malleyのジョイント作です。
竹楽器のスピリチュアルな響きと極悪なディストーションギターが織りなす2020年ディストピアのBGM。シリアスで神秘的。激しいのに静かな音楽。ノーゲスで1人店に佇んでいる際、自虐の如くよくかけていました。
弊店の内装はなんとなく和とエスニックのミックスを意識しているのですが、本作のジャケはそのコンセプトにもぴったりです。
音楽的にも、「暗い路地の人がいない店」ことsukimaを象徴しているように感じていて、シンパシーを感じている作品ということで選びました。
来年はSenyawaのような音楽やっている人のライブでもできたら最高です。

この記事を書いた人

eno

sukimaの発起人。